音律の話 高下 三郎

合唱の練習をしているときに、よく「ピッチを合わせて」「音が下がるよ」「音が上ずっているから下げて」などと注意されることがあります。そして微妙なピッチをぴったりあわせるために、よく調律したピアノを使うのはよくあることですね。このようにいつも正しい音程で声を出すことは合唱をする者の永遠の課題ともいえます。

 

ところが、よく調律したピアノの音は、実は狂っているのです。というか、少しだけ狂わせてあります。だから、ピアノにぴったり合わせたのでは、正確なピッチで演奏することにはならないのです。では、正確な音程とはどんなものでしょうか。そのことについて考えていきます。そこで、この文で取り扱う音程は、音取り段階の音程ではありません。その次の段階になる半音以下の音程(微小音程)について考えます。

 

ところで、この文での音名や階名の取り扱いについて説明します。

ここでは、音名には主にドイツ音名(C,Cis,Esなど)を使用し、補助的に日本音名(ハ、嬰ハ、変ホなど)を使います。そして、「ド、レ、ミ、ファ、……」を階名に使用します。

たとえば、ト長調のDの音は「ソ=D」、「ソ」、「D」と表します。つまり、長調の属音(第5音)だが絶対的な音の高さ(ピアノでたたく鍵盤)はDであるということです。

 

余談1(音名と階名):「固定ド唱法」「移動ド唱法」という言葉があります。「固定ド唱法」は音の高さを「ドレミ…」でとり、「移動ド唱法」は音程を「ドレミ…」でとる歌い方です。ということは「固定ド唱法」は「ドレミ…」を音名として使っています。そして、「移動ド唱法」は「ドレミ…」を階名として用いています。だから、「固定ド唱法」のことは「音名唱」、「移動ド唱法」のことは「階名唱」というふうに変えたほうが誤解が少ないと筆者は考えています。そして、「ドレミ…」という音の呼び方は階名で使うことにして、「音名唱(固定ド唱法)」での音の呼び方は「CDE…」なり「ハニホ…」を使ってもらえないかなと思っています。なぜなら、「ドレミ…」を音名に使うと、階名を表す呼び方がなくなってしまうからです。たとえば「ミの音を高めに」といいたいときは「長調の第3音(または短調の第5音)を高めに」といった表現しかできなくなります。(「ドレミ…」は階名となっていれば、こんな余分な説明も必要なくなります。)

詳しくはこちらから⇒

ダウンロード
音程・音律.PDF
PDFファイル 1.4 MB