歌声の音響 高下 三郎

音楽の演奏を勉強している人は、自分が演奏する楽器の音響や構造のことをよく理解しているものです。いい楽器を選ぶということといい演奏をすることが密接に結びついているからです。ところが「ピアニストと声楽家においては、自分の楽器の音響について理解している人が非常に少ない」というのが筆者の感想です。

 

たとえば、何年か前、NHK教育テレビの「ピアノのおけいこ」の先生(日本人としては超一流に位置づけられるピアニスト)が「手首を硬くすると硬い音色、柔らかくすると柔らかい音色になる」と言って、実際に硬い音色と柔らかい音色を弾きわけていました。

 

しかし、硬い音色のときはスタッカートで弾き、柔らかい音色のときはレガートで弾いていました。筆者は「スタッカートにしたから硬い音色に聞こえ、レガートにしたから柔らかく聞こえたのだ」と思いました。(だからこの場合「スタッカートにするには手首を硬くし、レガートで演奏する時は手首を柔らかくすると演奏しやすくなる」と説明するのが適当な表現ではないかと思います。)

 

またその時、「手首を硬くしたからピアノの音の倍音構成が変化して硬い音色になったなんて、なんで考えるのだろうか」「ピアノ演奏法において一目おかれる一流の演奏家にしてこうなのか」、と思ったものでした。(そのピアニストの音響に対する理解が、その後深まったかもしれませんが)

 

さらに、声楽においては言うを待たず、「頭声」「胸声」「鼻腔共鳴(あとで述べますが歌声には鼻腔共鳴はありません)」「のど声」「腹から声を出す」「響きを集める」などという、客観的に何を指すか、わけの解らない言葉で発声法を表現しています。

 

というわけで、ここでは「歌うたい」に、少しでも「正しい歌声の音響」を理解してもらえることを目的としています。

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